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胎児細胞を用いた染色体分析や遺伝子病の分子生物学的診断についての適応

一般には先天異常の胎児診断、特に妊娠初期絨毛検査に関する見解(日本産婦人科学会・昭和63年)a〜gに示された夫婦からの希望があった場合を適応として考えます。


ちょっと説明

a.夫婦いずれかが染色体異常の保因者

染色体異常児と診断される率は高齢妊娠に比べるとはるかに高いとされています。その率は染色体異常の種類や保因者が父親か母親か、などによって異なるので個々の例について検討します。

b.染色体異常時を分娩した既往を有するもの

両親の染色体が正常であっても、染色体異常児出産の既往がある場合には染色体異常児を反復して妊娠する率が高まる(約3倍)ことが知られています。

c.高齢妊娠

胎児染色体異常の約50%を占めるのは常染色体トリソミーで、その率は母体の加齢に伴って高くなることが知られています。例えばDown症は一般には出生1,000対1とされていますが、35歳では380対1、40歳では100対1となっています。そのため高齢妊娠とされる(出産予定日の年齢が)35歳以上の妊婦を羊水検査の適応としています。
出生前診断の種類


  1. 画像診断法(X線、超音波、MRI)
  2. 母体血を使用して検査する方法
  3. 胎児から細胞を採取して検査する方法(羊水、絨毛、臍帯血)
  4. 胎児鏡を用いる方法
  5. 体外受精した受精卵の1細胞を用いる方法(着床前診断)

1)画像診断法(X線、超音波、MRI)

妊娠16週を過ぎれば胎児の心臓は4つの部屋に分かれ、妊娠18週から20週ごろには先天的な心奇形がわかります。
胎児水頭症などは体勢23週ごろから診断が可能となります。


2)母体血を使用して検査する方法

母体血清マーカー試験(triple marker test)
妊娠15〜18週に母体より採血し、AFP、hCGおよびuE3の3つのマーカーの値を、過去に検査されたDown症児等を妊娠した多数の妊婦の3つのマーカーの値と比較します。これに年齢のリスクを加味してDown症児の生まれる可能性を確率で示し、ある確率以上に高まっている場合を「陽性」と判断します。陽性と判断された場合、羊水検査などのさらに詳しい検査を勧められます。


3)胎児から細胞を採取して検査する方法(羊水、絨毛、臍帯血)

1.羊水検査
<検査時期・方法>
一般的には妊娠15〜18週に経腹的羊水穿刺が行われています。この時期に行う理由は、羊水量が200〜300mlと多いため羊水採取が比較的容易である上に、羊水中の浮遊細胞の増殖力が旺盛で培養しやすいためです。羊水は約20ml採取し、2〜4週ほどで結果がでます。
<合併症・危険性>
合併症としては感染、出血、破水などがあり、一般には羊水穿刺後に流産に至る可能性は0.5%未満(約0.2%)と考えられています。

2.絨毛検査
<検査時期・方法>
絨毛採取時期は妊娠9〜11週という限られた期間となります。絨毛採取部位である絨毛膜有毛部に達するには経腹壁的ルートと経頸管的ルートがあり、ともに超音波ガイド下に採取器具を挿入します。
<合併症・危険性>
流産率は、熟練した施設で約2%と羊水検査と比べて流産率が高い。
出生前診断を希望する妊婦にとって早期にできるということは、胎児が異常であるかどうかといった不安状態に置かれる期間が短くてすむ点では有利ですが、妊娠早期に行われるので流産率は高く、妊娠の安定した中期に行われる羊水穿刺より危険であるとの評価がなされています。
<適応と禁忌>
絨毛検査の適応は原則的に羊水検査と同じです。しかし、羊水穿刺と比較すれば手技的に困難である上に、頻度的に絨毛採取後の流産率も高いことから受診者の強い希望が無い限り遺伝的にハイリスクの症例が選択されて施行されています。絨毛採取の禁忌は膣炎・頸管炎などの炎症、切迫流産兆候のある妊婦です。

3.臍帯採血
<検査時期・方法>
妊娠20週前後で1ml、妊娠30週前後で3〜5mlまでの血液を、主に臍帯で超音波ガイド下に穿刺、採血します。
胎児溶血性貧血の診断や治療に有用であるなど、染色体検査とは異なった意義も有しています。
<合併症・危険性>
出血・神経反射・原疾患の憎悪などによって胎児心拍数低下が発生し、妊娠週数によっては緊急帝王切開が必要となることもあります。胎児死亡率は約1%です。また、子宮内にいる胎児・臍帯を穿刺せざるを得ないため、胎児仮死の出現などの危険を伴います。


4)胎児鏡を用いる方法

妊娠中期に子宮に細い針を刺し、そこを通して胎児を直接観察します。染色体などの検査もでき、染色体異常とわかった場合には胎児の心臓に針を刺して死亡させることも可能です。


5)体外受精した受精卵の1細胞を用いる方法(着床前診断)

着床前診断
<検査時期・方法>
体外受精を行い、子宮に戻す前の受精卵の1つの細胞から核を取り出し、DNAを増幅することで遺伝子診断を行います。検査で異常が無ければ子宮に戻し、異常があればその受精卵を破棄します。
<合併症・危険性>
直接的な危険はほとんど無く、母体が中絶を行わなくてもよい点と確実に胎児の細胞を検査している点が従来の検査に無いポイントで、1998年6月、日本産婦人科学会は重い遺伝病の可能性がある場合に限定する、事前に学会で審査を行う、両親の同意を得る、ことを条件に着床前診断を認めました。
しかし、不妊症で無い夫婦に体外受精を行う点と、受精卵の破棄が簡単であるがゆえに、いくつかの受精卵を検査して親が選別したものだけ子宮に戻すことも可能であるために、生命の選別に繋がるとの懸念が強い点で慎重に対応が検討されています。
出生前診断を受ける妊婦の数(割合)


母体血による診断は年間約14,000件で、出生数120万人のおよそ1.2%が受けている計算になります。出生数のうち、一般に高齢出産といわれている35歳以上の出産は約145,000件で、全体の13%ほどです。

アメリカでの実施数(1990年度)
羊水診断
絨毛生検
臍帯採血
実施数 施設数 割合(%) 実施数 施設数 割合(%) 実施数 施設数 割合(%)
10未満 2 2.4 20未満 15 22.73 5未満 18 31.03
10〜100 3 3.06 20〜100 15 22.73 5〜20 22 37.93
100〜500 29 29.59 100〜300 21 31.82 20〜100 18 31.03
500〜1000 27 27.55 300〜1000 10 15.15 合計 58 100
1000〜 35 35.71 1000〜 5 7.58
3000〜 2 2.04 合計 66 100
合計 98 100

出生前診断により発見できる病気

費用


検査費用は保険適応とされていないため、母体血清テストで1〜2万前後、羊水検査だと5万から10万前後かかるケースもあります(病院・施設によっても異なります)。
親の心理
1975年、アメリカのDrotarらが、先天異常を有する子どもを産んだ後の親の心理経過について研究を行った。図1はその結果を示したものである。
☆先天異常を有する子どもを産んだ後の親の心理的変化☆
ショック⇒否認⇒悲しみと怒り⇒適応⇒再起

最初はとにかく強いショックに陥り、その後に否定の気持ちが生ずる。これは、事実が信じられず、そんなことはあり得ないという気持ちである。引き続き、悲しみと怒りの感情が起こる。この段階では、子どもへの愛着はまだ持ち得ない。この後ようやく自分のおかれている状況が認められるようになり、子どもを受け入れて育てていこうという気持ちになっていくというものである。

☆気持ちの整理がついた時期ときっかけ☆
気持ちの整理がつくまでに要した期間は、早い人で2週間から1ヶ月程度、64%の人が2〜3年かかったと認識していた。子どものADL得点により重症群と軽症群に分けてみると以下のように、1〜2年までに軽症群では82%の人が気持ちの整理がついたとしているが、重症群では28.6%であり、そのうち2名はまだ整理がついていないと答えていた。また、夫をはじめとする家族の支えが得られた人ほど、気持ちの整理がつくのに要した期間が短いことがいえる。母親が児を受容するためには、夫をはじめとする家族が母親を支援できるように、家族が障害児を受容するための援助を考えていく必要があるといえる。



気持ちの整理ができたきっかけは
  1. 家族に関連すること
  2. 障害児に関連すること
  3. 医療者に関係すること
  4. その他
の4つに分けられた。
カテゴリー エピソード
家族に関連すること 夫がすぐに受け入れてくれ、ベストを尽くそうと話し合った
夫の言葉「俺がついているから」
義姉の言葉「この子は周りの人の優しさを、愛情を引き出すために生まれてきた」
家族、親戚が明るく接してくれた
下の子が生まれ、育ち方の違いを改めて認識し、一緒に育てていこうと思った
障害児に関すること 可愛い顔で笑ってくれたから
障害があってもこの子は生きている
笑う、泣く、少しずつでも成長していると気付いた
同じ障害のある子どもの母親たちと色々な話をした
同じ障害のある子どもと一緒に保育を受けて
療育訓練での親との交流
親の会に入会
医療者に関連すること 医師に「現実を受け止めていかないと子どもは変わらない」と叱られ、考えを180度変えていった
医師に「病院を回るよりも訓練をしたほうが良い」と言われた
ハッキリ診断され、それが治療できないものとわかり納得せざるを得なかった
医療関係の友人に励まされた
その他 先のことを考えず目先のことから始めようと思った
訓練等でどうにかしてあげようと思った
診断されてから通院とリハビリでアッという間だった
特別なきっかけはなかった
考えても仕方なかったので

☆先天性異常を有する子どもの親御さんへの対応における基本的視点☆
  1. 生死の境をさまよって生きている子であることを忘れてはならない
  2. 親の心情や立場は、分裂し混乱していることを知らないといけない
  3. 親の本当の思いに蓋をさせてはならない
  4. 親の過剰な負担は極力減らすべき
  5. 親の言動や行動の意味を独断で解釈してはならない
  6. めぐり合いのメリットはどこにあるかわからない
  7. 本人・親の会も含めた社会資源の紹介は必要、だが、安易にしないこと

「児童福祉」

1.児童福祉とは
○基本理念:大人による手厚い保護が欠かせない、子ども(児童)の成長過程を通じて子どもの保護と心の発達、生活を保障することである。
○児童福祉サービス提供機関・施設・福祉関連職
児童相談所:都道府県・指定都市に必ず置かれている児童福祉の中枢機関
  1. 児童に関するさまざまな相談への対応
  2. 児童及び家族について必要な調査や医学・心理・教育・社会学的及び精神保健上の判定実施
  3. 児童及び保護者に対する、調査または判定に基づく必要な指導の実施
  4. 必要に応じての一時保護の実施
などを行います。

2.児童福祉施設の現状
@児童健全育成施設
○児童・家族対象相談事業  ○児童館・児童センターの設置と普及  ○放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)  ○児童環境作り基盤整備事業
A保育にかける児童への福祉施策
○少子化対策の推進  ○少子化対策推進基本方針  ○新エンゼルプラン  ○保育施設とサービスの充実  ○児童手当制度
B保護を要する児童への福祉施策
○養護に書ける児童の福祉  ○心身の障害と問題を持つ児童の福祉  ○非行児童の福祉  ○「児童福祉法」により公費負担医療


「心身の障害と問題を持つ児童の福祉」 *障害の種類って?
  1. 視覚障害
  2. 聴覚または平衡機能障害
  3. 音声機能・言語機能障害または咀嚼機能障害
  4. 肢体不自由(上肢障害、下肢障害、体幹機能障害、脳原性運動機能障害)
  5. 内部障害(心臓機能障害、腎臓機能障害、呼吸機能障害、膀胱または直腸機能障害、小腸機能障害、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害)
  6. 知的障害

18歳未満:児童福祉法(@〜Eが対象)
18歳以上:身体障害者福祉法(@〜Dが対象)、知的障害者福祉法(Eが対象)

○障害児は生涯その障害と付き合わなければならなく、日常生活・社会生活の制約、成長・発達を阻害されやすい状況下にある
○障害の早期発見、早期療育・指導が大切
○本人・家族の経済面、介護のための心身面の負担が大きい
○親亡き後の養育や生活の不安、年長児の就労の問題がある


*どんな福祉サービスがあるのか?
  1. 障害の予防と早期発見のための診断・相談及び判定
    ○妊娠中・分娩周辺起・乳幼児期の異常の発生防止
    ○妊産婦・乳幼児健診、保健指導の実施、先天代謝異常児の検査の実施
    ○母子保健対策にて治療のための治療研究助成などがなされている
    ○身体障害児には身体障害者手帳、知的障害児には療育手帳が交付
  2. 早期療育に必要な措置
    ○育成医療の給付
    ○心身障害児総合通園センター(療育訓練の場)や各種障害児通園施設(療育事業の実施)への通園
    ○身体障害者手帳を交付された児童には補助具の交付や修理が行われている
    〔義肢、装具、座位保持装置、特殊眼鏡、補聴器、人口咽頭、車椅子、歩行車、集尿器、歩行補助杖など〕
  3. 心身障害児在宅福祉サービス
    ○児童相談所:障害児に対する相談・援助
    ○居宅支援生活事業:障害児の日常生活や家庭介護を支援する
  1. 心身障害児居宅介護(ホームヘルプサービス)事業
  2. 心身障害児デイサービス事業
  3. 心身障害児短期入所(ショートステイ)事業
  4. 日常生活用具の給付及び貸与
  5. 心身障害児短期療育事業
  1. 施設入所によるサービス(措置権は児童相談所)

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